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マインクラフトで英語!

How do we get to speak English? The simple answer is here.

B.Q.R. J-75 『英語学習の極意』

『英語学習の極意』泉幸男 著

 

「外国語で考える」ことができるためには、外国語の単語を日本語訳語とつないでいるヒモを切って、外国語の単語をじかに理解するようにならないといけない。 

   受験英語的に、ある英単語=文字に対応する日本語訳を暗記するっていうんではなく、といって英単語=音の意味を、母語のほうから引っ張ってきたイメージ的「意味内容」の貼り付けとして身につけるんでもなく、そういう「表象と意味内容の分割」っていうある種暗黙の前提のようになっている構図をいったん取り払って(B.Q.R. J-74でも見たように)英単語=音それ自体がすでに「意味」なんじゃないかっていう認識のもと、はたしてどんな "VOCABUIL" が考えられるのか、っていうとなんだか大げさなんだけど、そうなると結局のところ、いったいじゃあ単語の意味ってどうやって身につけるんだよ、ってことになってくる。

  「意味」っていうのは、それが何かっていうのを考え始めると、なんだか捉えどころのない「意味は意味だよ」としか言いようのないものだってことがだんだんと分かってくるわけだけど、それは結局のところ「意味」っていうものが、単なる「訳語」だとかイメージ的な「像」だとか、そういうなんていうか指で数えて「何個ある」みたいに個別的に捉えられるものじゃなくて、なにか「集合的な経験」「経験の集積」みたいな無数の経験的な「流れ」のようなものから成り立ってるから、だからなんだか「捉えにくいもの」ってことになるんだろうと思うんだけど、じゃあそういう捉えどころのない、経験的な「流れ」としての「意味」みたいなものを身につけるにはいったいどうしたらいいんだろうか?

  集合的経験的「流れ」としての言語の「意味」は、何かそれ自体で存在しているわけじゃあなくて、一般的にはまず「音」として流れている。「文字」や「ジェスチャー」やその他の視覚的な情報っていうよりも、まずは「音」っていう聴覚的な情報=「意味音」として流れ始める。もちろんこれは、母語の語彙獲得プロセスからしても明らかなわけだけど、だとすれば、言葉の意味を身につけるにあたってまず必要となってくるのは、言うまでもなく「音」っていうことになる。

  で、語学学習の基本4技能(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)のうち、この「音」をその主要な学習対象としてるのは何かっていうと、リスニングとスピーキングってことになる(そして、先行関係としては、この「音」=「意味」の獲得が結果としてリーディングとライティングの技能を支えいくことになるんだと思う)。となると、受験英語的な暗記対象としての「意味」じゃあなくて、もっと本質的な、集合的経験的「流れ」としての「意味音」を身につけるためにはどうしたらいいのか、この問いに対するさしあたりの答えはそうなると、要するに「リスニングとスピーキングによって体験的に身につける」ってことになるだろう。

  で、ここまでくるともう「意味音」獲得としての語彙増強= "VOCABUIL"の方法と、そしてそのための最も優れたツールっていったい何なのかっていうのが明らかになるんだけど、それは、結局のところこのリスニングとスピーキングの両方を、同時的に遂行することが可能な学習形態、すなわち「会話」ってことになる。

  って言うとたぶん、「そんなのは時間がかかりすぎる」とか「効率が悪い」とか「お金がない」とか「そもそも会話ができない」とかってなって(まあ、「会話ができない」っていうのはゲーム実況ですぐできるようになる)、あんまり現実的じゃないって思う向きが続出することになるんだろうけど、でも早晩いわゆる「英会話」っていう学習ツールは、以前の記事でも何回か触れたA.I.=人工知能の登場によって劇的に変わる可能性があると思ってて、例えば今もうすでにこんなのがあるらしい。

 

・Musio

themusio.com

  

  ようやくこれでB.Q.R. J-71 から紹介してきた教材の最後ってことになるかな。で、すでに以前の記事でも触れたように、A.I.=人工知能ってごく最近出てきたものじゃあなくて、もうずいぶん昔から登場してるコンピュータプログラムなんだけど、これは1950年代と1980年代に2回ほど大きな盛り上がりを見せて、でもちょっとなんだかいろいろあって「どうやら無理そうだね」ってことでいったん下火になったのち、また最近になって再び注目され始めて、例えば自動車の自動運転だとか医療だとか、身近なものでいえばSiriだとかAmazon EchoだとかCubic.aiなんかの音声認識システムで既に成果を上げ始めていて、3度目の正直ってことでこの今回の第3次人工知能ブームっていうのは「どうやら本物らしい」ってことで、様々な分野でここ数年次々と新しい話題を提供している。

  で、なんで今回の人工知能ブームは「どうやら本物らしい」ってことになってるのかっていうのは、この過去記事を見てほしいんだけど......

 

espinmc.hatenablog.com

 このA.I.=人工知能は語学学習ツールとしても急速に進歩してきてて、おそらくもうあと4, 5年もすれば、たぶんその学習環境はさらにまた大きく変わって、例えば上記の "Musio" みたいなA.I.が、もっと手軽に身近なものとして携帯されるようになる日も近いんじゃないだろうかって思ってる。

本当は、単語を入力するかあるいは自分で知りたい単語を発音すると、その英単語の発音とその英語の説明が(あの例の無機質な機械音じゃなくて録音された肉声の)音で流れてくる、っていうのが理想なんだけどなあ。まあ、いずれ近いうちそんな辞書も登場するに違いない(いや、下で書くけど、もうそんなのもどうやら出てきているらしい)。

っていうのをB.Q.R. J-71で書いたんだけど、たぶんもうあと数年で、スマホや電子辞書のような携帯端末型の("Musio" みたいな)A.I.搭載型音声認識学習機器が登場して、例えば、っていってちょっと例を挙げてみると、こんなような "VOCABUIL" もそのうち可能になるんじゃないだろうか(っていうかもうこの "Musio" や "Siri" や "Amazon Echo" なんかで可能になってるわけだから、正確に言えば、こういう感じの "VOCABUIL" が主流になってくるんじゃないだろうか、ってことになるか)。

 

A.I.:"...... and then, you are becoming digitally adept from an early age, and ......"

人:"Wait, wait. What does the 'adept' mean? 'adapt'? 'adopt'? "

A.I.:"No, I said 'adept'. 'A' 'D' 'E' 'P' 'T' 'adept'. Well, it means being very skilled or proficient at something. So, if you are adept at something, you can do it skilfully.

人:"Uh-huh."

 

  たしかに「英会話」ってなると、駅前留学的英会話からオンライン英会話まで、週に2, 3回、30分から1時間ほど指定された時間帯にちょっとしゃべって終わりっていう感じだろうから、今現在広く流通してる「英会話」っていう既存のイメージからすると、あまりに効率が悪くて現実的じゃあないってことになるんだろうけど、例えばこの "Musio" みたいなA.I.=人工知能を、スマホや腕時計のような携帯端末で持ち歩くことができて、いつでも好きな時に気兼ねなく、何時間でも利用できるような環境があったとしたらどうだろうか。あるいは、単なる人形型のおしゃべりロボットじゃなく、画面に登場するアニメキャラクターみたいなA.I.が、身振り手振りでその言葉を説明したり、ネット上にある画像や動画を見せながらその言葉を教えてくれる、なんてことになったとしたらどうだろう。第2言語学習者が、単語の「意味」を、受験英語的日本語訳の暗記としてではなく、また英単語=音の意味を、母語のほうから引っ張ってきたイメージ的「意味内容」の貼り付けとして身につけるんでもなく、「表象と意味内容の分割」っていう暗黙の前提を取り払って、「意味」っていうものを「意味音」として徐々に充実させ、豊かにし、他の語彙と連結させながら言葉の「網の目」として絡めとっていく。そういう "VOCABUIL" を、効果的かつ容易に実行できる日がまもなくやって来るんじゃないだろうか。

  それにしても、このA.I.=人工知能の普及は、おそらく単なる "VOCABUIL"にとどまるものじゃなく、語学学習全般のあり方を(いろんなレベルで)変えることになるだろうと思ってて、期待が大きい。そして、その恩恵を最も受けられる可能性があるのは、おそらく、何年勉強してもいっこうに英語を使えるようにならず、その膨大な量の時間を結局無駄にしてしまうことになる子供や若者に他ならないと思っている。おそらく近い将来語学学習は、水泳やピアノなんかとおんなじように、ちょっと習ってしゃべれるようになったのち、あとはほとんどその習得それ自体には時間をかけず、むしろそれを使って自らの経験を楽しみながら広げていくような一技能に過ぎないものとなっていくだろう。

 

www.youtube.com

 "your curious new friend"......。「友達はお金で買えない」なんて聞いたことがあるけど、ついにこんな時代になったんだな。友達のいない、さびしい人間には朗報というわけだ...... 。ふむ、買うしかあるまい。

 

英語学習の極意 (文春新書)

英語学習の極意 (文春新書)